2026年01月29日

[12] 2026共通テスト物理 ついに難化、その中身は

平均点13点下落
 共通テストが始まってからずっと、物理の平均点は化学・生物に比べて高いという状況が続いてきました。生徒に毎年「今年こそは難しくなるぞ」と言い続けて、警戒を促してきましたが、今年ついに大きく難化しました。
 2025年の平均点が59点、2026年の平均点が46点と、なんと13点も下がっています。GHSでは「難化の年こそ飛躍の年!」ということで、GHSの平均点は全国平均より+17点をマークしました。
 去年が平均点と同じ点数からのスタートだった生徒が、難化の年に平均点より17点アップという事実は、一年でしっかりと実力を付けたことの表れでしょう。


A(天野):やあやあ、田川先生。今年も混ぜてくださいよ。
T(田川):もちろん、熱烈歓迎です。今年の化学は解説は書かないって先日ブログに書かれてましたね。

A: 2022年から骨のある問題が少なからずあったので、フルでの解説を書く気になったんですけど、今年はそういうのが姿を消して大人しくなってしまった。その結果がこれですよ。
化学点数分布.jpg

( 駿台予備学校/ベネッセコーポレーションより引用  https://dn-sundai.benesse.ne.jp/dn/center/doukou/dl/2026-dn-gaikyo-05.pdf)

  ダイヤモンドヘッドかーい! Wwと叫びたくなるような、歪な分布になっています。つまり高得点者がごそっといるわけで、これではGHS生のアドバンテージが発揮できません。「体系化学でやれば、こんな優位性が・・・」を示す素材としては落第なので、「どこよりも早い解答解説!!」のモチベーションがロストしたわけです。
T: 昨年までの物理はまさにそうでした。でも、今年は「難化した」というから、今年は物理の番か!! と立ち上がりかけたのですが・・・。ちなみに、物理の分布はどうなっていますか?
物理点数分布.jpg
A: 昨年までが、右(高得点)に偏位しすぎていたのが、上位がごそっと削られて、平均点付近がピークになっています。まあね物理も化学もできない層は一定数いるということで、山は二つありますが、その間が長いか短いかの違いでしかありません。

T:度数分布としては化学よりはまともな形になっているし、難しくなって上位層が減るのはGHSのアドバンテージですから、その点は良しとしましょうか。ただ、重要なのは、どういう点で難化したか、という分析です。

 共通テストの問題についてですが、今年の難化の中身は何でしょう? 大きな原因は、第2問の「重心単振動」の問題です。この問題を検討する前に、他の第1問・第3問・第4問を検討していきましょう。 

第1問・第3問・第4問の検討
第1問
T: 小問集合です。交流・慣性力・原子物理など、扱う題材はレベルの高いものでしたが、中身はというと・・・な問題がほとんどです。
 交流は、式を立てずとも定性的なイメージで解ける“骨抜き”問題です。慣性力についても、同じく定性的な問題です。問題の前に、ひとつ実験があり、この実験結果を手掛かりにすれば、慣性力の知識がなくとも正解できます。これも骨抜き・・・。
 原子の問題は「コンプトン効果」の問題でした。
コンプトン効果の問題は、「原子物理の公式を用いた二次元衝突の問題」でエネルギー保存則と運動量保存則を連立して解いていくという、私立医学部にも出題されるややレベルの高い題材です。
 しかし、本問では、運動量保存則がすでに与えられているというわけのわからないアシスト(というかほぼ答え)があり、さらに θ=90°, λ≒λ'という二つの条件が使えます。 λ≒λ'はコンプトン効果で定番の近似であり、そこは問題ないのですが、θ=90° という設定により、エネルギー保存則を立てなくてもよいという問題設定になっています。
 解答に必要な式が与えられて、あとは条件を代入するだけ・・・これは題材がコンプトン効果である必要もなければ、物理の問題である必要もないという今までの共通テストでも最大の骨抜き問題、いや、中身が全部なくなって、題材だけ物理的な“皮だけ”問題になっています。これで「原子物理を出題した」という建前を作ったつもりなのでしょうか・・・?
 総じて、第1問は今までの共通テストの(悪しき)特徴を踏襲した“骨抜き”問題でした。物理のテストかと問われれば、微妙なところです。

A: 第1問は小問を集めて、「全範囲を満遍なく出すぞーという」方針(建前)を満たす役割ですが、物理は問題すうが少ないため、ここが不可欠です。それでも、5つも問題があれば、一つくらいは、オッ! と言えるややハードルの高い問題を配置してもいいはずですが、みんな見掛け倒しのコスプレ問題です。「骨抜き・皮だけ」というご評価はムベなるかな、です。


第3問
T: A問題とB問題に分かれています。
A問題:熱力学 PVグラフの読み取りの問題です。難易度は低く教科書の例題レベルです。
B問題:波動 センター試験時代でもよくあった、波の図を読んでいく問題です。こうした波の図的問題は、難易度が低いため、国立の二次試験ではあまり出ませんが、波の学習において、基本的であり大切な問題なので、それが共通テストでも引き続き出題されるのは二次試験でカバーできない部分を補っているという面で良いことです。


第4問
T: 前半の問題はコンデンサによってつくられた電場の中での斜方投射で、後半は磁場中の円運動でした。後半の最後の問題は、斜方投射→磁場中の円運動の流れを、電荷の質量を変えたらどうなるか、という合体問題で、答えを得るために必要な式の数が多く、計算に時間がかかります難易度もここまでの問題に比べて急に上がっており、正解できた人は少なかったでしょう。


A:第4問で電場+磁場+力学のミックスワザで出題範囲を広くカバーしましたから、第3問は波動・熱力学の折半で、全範囲カバーしたことになりますね。特に、二次試験には出ないというか、出しにくいところをカバーするというコンセプトは、たしかに功徳ある善行でござりしょう。

T:ここまでの問題は、例年の共通テストと、質(定性的な骨抜き問題)・難度ともに例年通りで、強いて言うならば、第1問の題材がハイレベルなので、平均点はここでもやや下がるかな・・・?という印象です。やはりネックは第2問でしょう。 


第2問 のハードル
T: 重心系単振動の問題です。重心系単振動とは、重心を中心に二つの物体が単振動する、という<二体問題>の代表例で、昭和の終わりに東大で初めて出題され、やがて地方国立・私立大学でもふつうに出題されるようになった“難問”の系列の一つです。

 ただし、重心系単振動には、問題の出し方によって、難易のレベルがあります。簡単な問題は、運動量保存則とエネルギー保存則を連立して解くというもので、どの参考書にも載っている解き方です。
 難しい問い方は、この両端で振動している物体の単振動を、<重心>から見ると(=重心系座標)、2つのバネが対称的に単振動しているように見えるので、物体について、
@ まずは重心の速度を出す (VG=1/2V1)  [問題の設定ではこれがV]
A @で出した重心速度と同じ速度で動く座標を設定する
という準備をしておきます。

A: すると、長さが半分になるので、バネ定数は2kとなり、独立した二つのバネの単振動として解けばいいのです。質量M が共通なので、振幅についてはB1だけ考えて2倍すれば終わりです。重心から見た初速は1/2V1です。
 これは、体系物理ADでは、Theme3として、例の東大の問題を取り上げて(タイトルは「歴史はここから始まった!」)、解説するので、どちらの解き方でもGHS生ならスイスイと解いてしまうレベルですね。
 しかし、このテーマ自体は世間では「難問」であり、かつ、問題集にも一つくらいしかなくて、しかも、それを避けて通っていたりするので、多くの受験生は、文字通り「面食らった」ことでしょう。すると、設問10と11で-10点ですね。

T: さて、今回の共通テストの第2問はどうなのかというと、「問題あり」です。
問題で求めたいのは、簡単な問題の解き方で求められるものであるにも関わらず、難しい解き方(重心から見るとき方)で誘導し解かせている
というねじれが起きているのです。共通テストの誘導に乗らずに普通に解いた方が解きやすい問題を、重心を意識した誘導で間違えやすくさせているとも言えます。
 実際、GHSで96点を取った生徒は「誘導を無視して解きました。簡単でした。」というコメントをしています。つまり、「誘導に乗る方が難しい」わけで、これは問題作りとしてダメでしょう。そういう意味では、今年の平均点低下は“人災”の面が強いと言わざるを得ません。

A:バネが最も伸びた時ですから、重心の速度と両球の速度は一致します。ならば、重心の速度など持ち出す必要はないわけで、力学の二つの保存則でスッと解けます。・・・これだと差がつかない、とでも思ったのか、そこにここでは必要ない重心の話を無理やりくっつけているので、保存則で解いてから、最後に重心の速度に置き換えるというステップが入ってしまいます。
 衝突直後のB1の速度V1だけでできるので、無駄な置き換えです。

重心速度を出すなら、重心から見た運動がどのようになるかの誘導をかけて、周期を求めるとか、各球の速度のグラフを選ばせるとか、単振動の特性に設問をふるべきだったでしょう。

T: こんな基本的なことを改めて言うのもおかしな話ですが、誘導は難所を突破するための「アシスト」であるべきです。にもかかわらず、出題者の意向に受験生が振り回される、これは物理の問題作りにおいては、「悪問」と呼ばれても仕方がないでしょう。

 第1問の“骨抜き・皮だけ”の物理的希薄さ、第2問の誘導のねじれ、第4問の最後の問題の難易度調整不備、これらを総合すると、今年の共通テストの完成度は過去最低と言われてしまうかもしれません。物理の問題はどういうものであるべきか、という基本的なことが分かっておらず、受験生がどういう解き方、考え方をするかという視点も足りていません。

A: なかなか手厳しいですね。大学入試センターににクレーム入れてください。(私は気が弱くてそんなのでできませんが...Ww)

T: いつものトークですね。
 結論は毎年の繰り返しです。ようするにセンター試験のままでよかった、ということです。そして、受験生の対策法も毎年変わりません。二次試験に向けて対策をしておけばよい、ということです。共通テストが始まってから、毎年コメントを載せてきましたが、今年の共通テストにコメントをする価値はあるのでしょうか? 来年も同じことの繰り返しなのでしょうか?化学と生物の得点とも乖離しているし・・・科目間の難易度調整も機能していません。

 しかしながら、GHS生が毎年高得点を取っている、ということだけは、毎年繰り返しこのブログに書く価値があるでしょう。世間的に「難化した」と言われる年こそ、本物の実力を付けたGHS生が大きく飛躍する。どういう問われ方をしても、しっかりと自分で考えて解いていける、本物の実力の大切さを改めて証明したテストではありました。  <了>
【入試・共通テストの最新記事】
posted by SatoTea at 11:17| 入試・共通テスト

2025年01月27日

[11]2025共通テスト・物理 解析

センター試験への“回帰”

毎年恒例の、共通テストのレビューです。先に今年の共通テストを一言で述べておくと、

センター試験への回帰

でしょう。

 GHSでは共通テストが始まってから一貫して「物理の形式はセンター試験のままでよかった」と主張してきましたが、やっとそれに時代が追い着いてきました。共通テストに特有だった不要な対話形式もなく、説明や誘導がだらだらと長くなるような問題も少なく仕上げられています。

問題の難易度は、全体として標準レベルでした。「これは難問!」という問題がなく、まじめに勉強している人であれば、高得点を取るための障害はほぼないでしょう。


GHS生の“理科合計点”

まず、今年の共通テストの全国平均データですが、物理が60点で、化学が46点であり、相対的に化学が難しかった年でした。そして、今年のGHS生の物理の平均点は78.5点(全国より18点高い!)でした。

物理の平均点の高さもめでたいことですが、GHSの真の見所は、“物理+化学の合計点”の高さです。今年のGHS生の理科の最高点は191点(物理97点+化学94点)でした。これは全国的に見てもかなり高い点数と言えます。


この高得点の秘密は、「物理をさっさと解き切って(40分)、解答時間の一部を化学にまわす(80分)ことができたから」とのことです。共通テストでも他の入試でも、物理ができるということは、物理で高得点が取れるということ以上の“理科合計点”の点数上昇があるのです。単なる“高得点”から“高得点+時短”のレベルまで実力が向上したからこその理科の合計高得点なのです。



各問題についてのコメント

問題1

小問集合です。モーメントの合成の問題は知らない人も多かったのではないでしょうか。ここで満点を逃した人もいたでしょう。それ以外の問題はどれも標準的です。


問題2

単振り子の問題です。単振り子の周期は重力の影響を受けるので、振り子の周期を測ると、重力がわかります。地球表面で感じる重力は、万有引力+地球の自転による遠心力の和になっていますので緯度(=半径)が違えば遠心力も変わり、振り子の周期が変わる、というわけです。

ならば、せっかくなら、たとえば日本の南北で体重が違うという有名な話もありますし、実際に重力がどれだけ異なるかについての数値計算をさせてみても、受験生にとって実感がわくという意味で面白かったかなと思います。


問題3-A

このように1問をABの二部に分ける手法は、広い範囲を問いたい場合にセンター試験のころからしばしば使われています。Aでは熱力学が問われています。PVグラフと仕事の関係、PVグラフと温度変化の関係が分かっていればどうということはありません。3問で構成されていますが、熱力学の基本がわかっている受験生であればその3問は2〜3分で終わってしまうので難易度はちょっと易しすぎかもしれません。


問題3-B

波の重ね合わせを、波の式から導出する問題でした。波の式についての定番の問題であり、一度演習をしたことがある人にとってはふつうに解けます。


問題4

電磁誘導の問題です。以前の共通テストで扱われた「定常状態」に移行する運動の、高校過程で習う3つのうちの最後の1個(残りは空気抵抗・コンデンサの充電)です。この電磁誘導については、大手予備校の『共通テスト予想問題』『共通テスト対策模試』にも数回出題されていたので、受験生側も対策できていたでしょう。



計算やや増・網羅性増

今年の共通テスト物理は、どれも基本的・標準的な内容が多く、発展的な内容が少ないようです。GHSのカリキュラム的には、原子を除けば、どの問題も前期(4月から7月)で学習・演習した内容の問題ばかりでした。


 全国の受験生=難関以外の受験生も含む受験生が受けるテストとしては、教科書+学校で配られる問題集をしっかり学習すれば高得点を取れるという意味で、この難易度でちょうどよいでしょう。


“計算不要・イメージ重視”という共通テストの初めからの傾向はまだ消えたわけではありませんが、実際に解こうとすると、グラフの問題の中に式を立てて考える要素をちりばめてあります。それもあり、計算量はまだセンター試験時より少ないものの、以前よりは確実に増えています。


 範囲については、以前からあった“思考力問題(不毛な会話問題?)”の誘導に問題数を使いすぎて出題範囲に偏りが出ていたのも、今年はそういった問題が消えてくれて、力学・熱力学・電磁気学・波動の4分野の内容がきちんと出題され網羅性が上がっていました。

 総合的には、問題の傾向・形式ともに、センター試験の時代に“回帰”していると言えるでしょう。いろいろと試行錯誤し、

「やっぱりセンター試験でよかったね」

という結論に落ち着いてきているのでしょうか?(共通テスト元年から、そう言ってあげてましたよ・・・・・・)


 物理という科目単体で見ればもちろん「センターのままでいいね」ではあるのですが、しかし、理科全体でみると化学・生物との科目間の点数の格差はまだ存在しています。今年もですが、共通テストが始まってからほとんどの年で、生物選択者より物理選択者が有利な状態が続いています。他の科目の平均点を60点前後に上げるか、それとも物理の平均点を50点前後に下げるか、これからの共通テストはどちらに進むのでしょうか?


 この程度の問題ならば、わさわざ GHS体系物理の視点から解説を施して公開するほどのことではありません。が、もしも今後、物理の難易度が高くなる方向に進んだ場合は、このブログ・もしくはHPにて、問題の分析と解説を掲載したいと思います。


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posted by SatoTea at 16:06| 日記

2024年01月25日

[10] 2024 共通テスト・物理ってどうよ

共通テスト物理  対談

田川(T): 4回目となる共通テスト・物理、昨年同様、高得点者層に偏る分布になりました。「2023年の共通テストが簡単だったから、今年は難しくなる」という予想が大手予備校では主流になっており、それに対応して共通テスト模試がつくられていたりしましたが、その予想が覆り、今年はさらに平均点が1点上がる結果となりました。
 今年度の問題の解析・解説について、GHS長野校の方では、体系物理の個別指導もされている天野先生(A)と意見交換しました。

T: 今年も昨年同様に、いろいろな意味で易しい物理、となりましたね。第一印象としてはいかがでしたか?

A:化学、漢文、古文とみてきて、昨日ようやく物理と数学の問題を見ました。物理は、昼休み時間にとりあえず最後まで解いてみましたが、んー、第一印象を、喩えでいうなら「皇居一周ジョギング」というところですかね。

T:そのココロは?  安全に、難所もなく、気持ちよく走れるということ、でいいですか?

A:そう。その通り!! さらに、あと一つ付け足すと、皇居は一周5kmですから、7km/hくらいのゆるっとしたスピードで走れば40分ちょっとで走り切れます。二次試験レベルの実力十分なら、このくらいでサッサと仕上げて、10分で見直し、残りは化学を解き始めるという戦略がベストでしょう。化学は、特に第5問が文章が長いので、読む時間をここで稼ぐと丁度いい。
 実際に、長野校で見事100点満点を取った生徒がいますが、事前に指南した通りにやって成功ました! (^^)v

T:そうですね。難易度の高い問題もなく。その上いくつかの問題にはご丁寧に誘導まで付いているのですから、楽々やりきることができますね。生徒からも、「時間が余ったから化学の問題を見てました」とか、「見直しに時間がかけられました」というコメントがありました。
 共通テスト化学については天野先生が2023年の問題解説に続き、2024年の問題についても詳細な分析をHPにアップロードしていますが、物理はこれほど易しい問題ですと、解説を作成するまでもなく受験生は正解だけわかれば理解可能でしょう。2023年の物理も易しかったため、解説はつくらず、ブログでコメントするだけに止めましたが、2024年も引き続きブログでのコメントでいいでしょう。

A:大手予備校で出しているコメントをみると、「昨年と比べて」という話ばかりなので、GHSでは俯瞰してもっと広い視野から分析しましょうか。共通テストになってから、4回目ですが、昨年も指摘したことですが、物理は、生物や化学とくらべて、どうも「共通テストの理念・理想」が逆に足枷になっていますよね。これを、共通テスト・物理の「呪縛ルール」と呼びましょうか。
 どんなルールがありそうですか。かわり番こで一つずつ挙げていきましょうか。

T: そうですね。とりあえず、
  1.法則や公式の導出プロセスの重視・見直し・・・式に当てはめて終わりというのではなく、どういうデータから導かれたかを問うというコンセプトですね。

A:初年度の運動の法則を実験的振り返り、昨年度の速度と空気抵抗の公式のデータによる修正、今年は、弦の定常波による伝導速度のパラメーター関数をデータから求める第3問がそれに当たりますね。

  では私の方も。呪縛ルール2は、

 2.身近な(と感じられる)素材を元に、物理に親近感を持ってもらう・・・・これは数学では物議を醸すくらいに頑張ってやっていることですが、物理にも伝播しています。

T: 化学だったら、身近な素材は、人工的有機高分子を出したり、薬剤の成分などを出せばクリアできるので、自然な感じですが、物理ではそれが「不自然」な頑張りに見えます。今年の水噴射ペットボトルロケットとか、昨年のカップの落下と空気抵抗とか、ネタ探しに苦労しているなーと。昨年、そのうち物理だけはネタが尽きるのでは・・・と危惧していたものですが、本年はペットボトルロケットか・・・

A:これは、夏休みの科学自由研究のネタでしょ。あるいは、「〇〇じろう先生のフシギ科学」なんとかでありそうなネタですね。もしかして監修とか出題メンバーに入ってますか(笑)。・・・まあ、かといって、その実験動画なんか見ても、問題を解くのには直結しませんので、オススメしません。(笑2)

T:ペットボトルはともかく、ロケットが推進剤を消費しながら進む問題は、「ロケット問題」として、大学初年度の力学演習の定番です。それを大学入試問題に落としてくる、というのは、まあ大学入試物理の問題作りの定番ではありますから、まるきり不自然、というわけではないのですが・・・。ただ、この問題についてはまだコメントすべき点がありますので、後に述べさせていただきます。その点にも関係しているのが三番目のルールです。

 3.数学計算を極力回避する・・・・・・これは初回から一貫していますが、最も意味がわからないルールです。物理と数学の表裏一体とも言える関係を、敢えて断ち切る理由がどこにあるのでしょうか? こんなことをすると、二次試験とのギャップが大きくなり、入試物理らしくなく、違和感が際立ちます。

A:私も意味がわからない。高等数学を駆使してこそナンボの物理で、大学での物理学に繋がっていく、本来物理にあるべき「数学と物理の一体性の再生」が、<体系物理>の主要コンセプトの一つですが、この対極に位置するものです。作っている物理の専門家の方々も、あれもダメ、これもダメ、あれを入れろ、これを加えろ、とがんじ搦めの縛りに、忸怩たるものがあるんじゃないかと、むしろ同情さえ覚えますな。では、4番目。

 なるべく初見の、定番ではない、見慣れない題材を扱い、「やったことがあるからできる」を排除する。ペットボトルもそうですが、これはルール2に含めるとして、今年の問題でいうと、第2問の、磁場+交流で発生する定常波という実験装置。それから第3問の面状抵抗がこのコンセプトです。ただこういうミックス素材というのは物理の入試問題としては一般的であり、むしろ、今までそういう面を押し出してこなかったセンター試験と比較していえることで、私立医学部の問題と遜色ないように見せる工夫かと思いますが・・・。
 ルールと言えそうなものは、まだありますか?

T: これは従来のセンター試験と共通で、公的試験としての宿命でしょうが、4.全分野から満遍なく出す、という点も挙げられるでしょう。共通テストになってからは、網羅性という面ではちょっと弱くなってはいますが・・・

A: 文科省指導要領に準拠するのは「宿命」ですから、仕方ありません。・・・・大手予備校の分析コメント見ていると、「全分野から出題されている」と毎年のように判で押したかのように(いや、コピペしたかのようにW)書いてありますが、そんなの当たり前で、分析でもなんでもない。偏っちゃったらそれこそ物議ですよ。そういうときこそ「出題範囲の偏在」と分析すべきでしょう。

T: 大問主義の大学の二次試験だと、「熱力学」なしの年とかザラにあったりして、大学の過去問を見て、分野のヤマ掛けもまあ、意味がありますが・・・・。『体系物理』テキストでは、1.力学・2.熱力学・3.電子磁気力学・4.波動(力)学・5.量子の力学の順に展開されていきますが、今年の問題でいうと、
・力学は、第1問の問1のモーメントと、第2問のペットボトル・ロケット(これについては各論で触れましょう)、
・熱力学は、第1問の問2のボルツマン定数、および第2問のペットボトル・ロケットの一部、
・電磁気力学は、第4問の点電荷および直流と面状抵抗と、第1問の問4と第3問の問1の電磁気力(ここは被っている。第1問の問4って必要?)、
・波動(力)学は、第1問の問3の光の全反射、第3問の問2以降の定常波

という配分になっています。

A: 一つの問題に複数分野をまたがせたりして、とりあえず偏りなく問うてますよ、やらなくても平気というような分野は今はありませんよ・・・・以前は現場に配慮して「原子物理・実質免除」とかありました。それでも文句は出なかった。昔、物理Iが範囲だった頃はともかく、2016年以降、理系は、物理全範囲に拡大されたため、会席御膳みたいに、色々な料理がちょんもりずつお膳にのっかっているような、それでは上品すぎるというなら、バイキング形式のように、とりあえずトレイに載るだけ取ってきた時みたいな問題になっていて、さらにそこに時間制限が加わるから、どの問いも「シングルタスク」で、浅いものになっていますね。
今年の問題で、「これは物理とていい問だね」というのはありますか?

T:物理として・・・というと、もっと難易度が高い問題が欲しいところなので、何とも言えませんが、物理的なイメージを付けるという点でとてもいい問題だなと思ったのは、第4問の面状抵抗の電位についての問題ですね。電位の様子を図にすることによって、導体中の電荷の電流の流れ方が視覚的に分かる、という。易しくもためになる問題だったと思います。共通テストに出すには易しすぎですが、教科書や傍用問題集に載せるにはいい問題でしょう。      <後編に続く>
posted by SatoTea at 15:21| 入試・共通テスト

2023年09月21日

[9] 『体系物理』テキスト「別冊」がもつ意味

田川(T) : 今回は体系物理・別冊の話です。
例によって天野先生に、今回は著者としてご参加願います。
体系化学ブログ[172]でも紹介されていますが、「共に歩んだ者」として、是非、この別冊について書き記しておきたいと思います。特講の全部がまとった154ページというのは、色々な意味でとても「重い」ものです。

別冊 表紙.jpg

天野(A): それはそれは。
オンリーワンの「歴史の証人」としては、色々と思うところあるでしょうね。
私も是非聞いておきたいものです。
昨年の今頃、特講1の「量子の力学」だけの分冊をver.1として試作しました。この長きGHSの歩みにおいて、なんと「原子物理」が初めて製本テキストとなりました。なぜそんなことが出来たのかについては、「まえがき」「あとがき」に書いておきましたが、端的には、GHS長野校で必要になったからです。
昨年、原子物理だけの試作版Ver.1を新宿に持って行ったときは、「二学期に使うとしても、まだ今年の生徒には早いかなー」という話でしたね。

 T   : そうですね。
テキストの配布タイミングもそうですが、昨年度は、原子物理の授業も少し遅めに始めました。
原子物理の授業の開始時期は毎年生徒の学習進度によって変えています。
生徒たちから見ると、原子物理はいままで授業してきた古典物理とはかなり異質に見えるので、原子物理を学んでいくときに、ちゃんと古典物理との違いを対比しながら学んでいけるほどしっかり古典物理の内容が常識としてなじんでいるかどうか、ここのところをこちらで判断してからスタートします。
 せっかく古典物理が体系的になりかかっているところを、原子物理の概念たちによって混ぜ返されてくちゃくちゃになってしまうのはもったいないですからね。

 A  :  その通り。
「体系物理」の4本の柱をしっかり学んで、その物理学的発展の先に、量子の力学があるのですから当然です。
そこまでが大してわかってないのに、「共通テストに出るから」と言ってアリバイ的に高校の授業で原子物理に触れたところで、「何を言っているかわからない」となるのがふつうです。

 T : テキストにも書いてありましたね。
アインシュタインがノーベル賞をもらった数年後でさえ、それを理解し、発展させようという科学者より、そもそも信じていなかった科学者の方が多かったというくらいですから。

・別冊 p.1-17より引用
1921年􏿱􏰁アインシュタインが光電効果􏰀理論的業績􏿱よりノーベル物理学賞を受賞。1923年 􏿱􏰁、ミリカンが電気量􏰀最小単位(􏿶􏰀電気素量)􏰀を測定􏿲、および光電効果􏰀測定の􏰀業績􏿱よ りノーベル物理学賞を受賞しました。ちな􏿳みに􏿱、ミリカンは􏰁、プランクおよび􏸀アインシュタイン􏰀光量子仮説を信じて􏿴おらず、その􏰀誤りを見つ􏿶けるべく精密􏿳実験を繰り返した結果、皮肉􏿱も、プランク定数を確定する􏿱に至􏿹ったそうで􏿰す。

・別冊 p.1-26より引用
コンプトンは􏰁後の􏰀回想で􏿰こう述べて􏿴います。「1923 年􏿱アメリカ物理学会􏰀で􏿰結果を発表した􏿲き、これまで􏿰知るうち􏿰の最も激しく争われた科学論争が始まっ􏿹た。」􏿲というの􏰀は、1905 年􏿱アインシュタインが光電効果を説明した 20 年近く経って􏿴􏿴も、􏿰􏰁まだ、光が波動性􏿲と粒子性の􏰀二重􏰀の性質を持􏿶􏿲つという考え􏰁すら、􏿰􏿱科学者の􏰀間で􏿰十分に􏿱􏰁受け入れられて􏿴いなかったからで􏿰す。

 当代一流の物理学者さえ疑心暗鬼・眉唾モノの手探りで進んでいた時代の雰囲気を伝える、随所に配置された歴史的エピソードが、「安易にわかる」ことへの警鐘にもなっています。

A  :  安易に進んではいけないし、安易にわかってもいけない。
そう思って頑張って学べばよい。
ところで、君が在籍していた約10年前の原子物理の授業は、センター試験向けの「マイナーポイント演習」だったでしょう?今回の別冊と比べるとかなり簡潔だったとおもいますが。

 T : はい、天野先生の原子物理の授業では、毎回授業ごとに小冊子が配られる形でした。
今回みたいな製本されたテキストではなかったのですが、その授業も2,3回で終わるものでした。以前のテキストは今回に比べると簡潔でしたが、法則のとらえ方についての古典物理(と体系化学)で学んだことを踏まえての解説や、物語的な構成など、今回のテキストのエッセンスはすべて入っていたように思います。
 個人的には、私は医学部志望ではなく(私立医学部では原子物理がよく出題されます)、以前の入試では原子物理が出題される頻度も現在よりは少なかったので、簡潔にエッセンスを学べたことは入試的にはよかったですね。

 A  : 入試問題を並べてね。絵本みたいに、説明文の方が少ないテキスト。
原子物理を「歴史物語」を説くことはその昔からやってはいました。しかし、それを文章化して、テキストにするのは全く別物。書く方が格段に難しい。
あの当時の自分には、正直言って「書けなかった」のです。『体系化学』から始まる著作の積み重ねがあって漸く・・・ということです。
特講1「量子の力学」の内容を見て、もっとも違うな―と思うのはどこですか?」

 T:   やはり物語の厚みが増している、ということですね。
それに伴ってカラーの図がふんだんに使われて、より原子物理の物語が生き生きと、読み応えたっぷりに描かれていると思います。個人的に最も鮮烈に印象に残ったのは、カラー印刷で光の図に色がついていることです。
 「そんなことが?」と思われるかもしれませんが、当時のテキストは白黒コピーで、光の図はすべてグレーのグラデーションでした。紫は濃いグレー・黄色は薄いグレー、というようにです。そのグレーの光の上に、私を含む当時の生徒たちが色鉛筆でせっせと赤・青・黄色・・・と塗り絵のように色づけていってテキストを「復元」していったわけです。
 自分で手を動かして作っていったわけですから、それはそれでよい勉強になったのは確かですが、出来上がったお手製テキストの色自体はどうしてもくすんでしまうわけです。その塗り絵復元時代を経て、今現在の鮮やかなカラー印刷を見ると、過去のグレートーンの図との対比で、現在の光の図が一層ビビットに映ってくるのです。
 そうしたカラーの図がふんだんに使われて、初期量子力学の歴史が(色的にも内容的にも)鮮やかに描かれた今回のテキストは、テキストを面白く読み、例題に取り組んでいくだけで、単に入試に必要な式が学べる、というだけでなく初期量子力学の歴史についての科学史的教養も十二分に身につく物語になっていると感じました。

 A  : (ええこと言わはるで〜) 特に原子物理は、物理学史的にも紆余曲折の連続。
というか右往左往、一進一退。要するに年表を見ただけではグダグダで、発展の流れが見えません。
だから、「まえがき」に述べておいたように、事実の歴史を、論理的に配列し直し、かつ、紆余曲折のない歴史の再構成という作業が必要でした。GHSの長野校で何人もの個別指導を重ねて、ようやく「書けるかな〜」という感じになったわけです。
 それに比べれば、交流回路なんて楽ですよ。これは微積分の数式の入力が面倒臭くて、板書の方が断然早いから書かなかっただけで・・・。まあ、今回は、特講1にとどめておきますか。電子ブック版で全ページ読めるようにしておきました。


T:それは豪気ですね〜。興味を持った人は、是非、フルカラー版をご堪能ください。
posted by SatoTea at 08:23| 体系物理

2023年08月22日

[8] GHSの夏によくある風景

 先週末も、GHS卒生が来校してくれました。特に、大学生になってのはじめての夏期休暇は、GHSを訪れる卒生が多いものです。
今回の二人は、順天堂大学・医学部で「出会った二人」です。

・・・というのも、一人はGHS本部新宿校の卒生、一人は、GHS長野校の卒生なのです。もっとも、そういう形で医学部でそれぞれの卒生が初対面というパターンは、2年前にも日大・医学部でもありました。長野校からも毎年のように医学部合格者が出ていますから、こういう光景もふつうになっていくのでしょう。

 長野校・主宰の天野先生は、長野校と新宿校で授業をしていますから、化学の授業は共通で、オンラインを通じて同時に出席しているわけで、全くの初対面とは言えないのですが、そういう繋がりのGHS生が大学で出会うのというのはどんな気持ちなのでしょうか・・・。同じ体系的メソッドで学び、共感し、実力をつけて、晴れて医学部合格・・・初対面でも話が合わないわけがありません。ということで、これから長野に帰省するというKさんと連れ立って、Mさんと二人が昼休みの時間に合わせて来校してくれました。


IMG_2664.JPG
(ちなみに撮影は天野先生です。談:「個人情報云々の昨今なので二人の顔は直接映らないようにして、でも田川先生は目下売り出し中ですから、少しは露出していいかなと 笑」)


M「今年のGHSは去年の私たちの代よりにぎやかですね!」
T(田川)「そうだね、去年はまだコロナの影響もあったけど、今年は募集を早めに締め切るくらい各地から生徒が殺到したからね」
M「それとびっくりしたのが、GHSに男子がいる(笑)!」
T「それは去年が特別だったんだよ(笑)。なぜか去年のGHS生はほとんど女子で、割合としては女:男が9:1くらいだったかな・・・。僕が物理の担当になってから何年か経つけど、あんなに女子の比率が多かったのは去年だけだよ。事実として、物理の授業は例年半分以上が男子なんだけど、きみの年はほぼ全員女子でびっくりしたよ。」
M「不思議でしたよねー」

T「大学はどうだい?Mさんは物理選択だったから、医学部に入って生物を学ぶのは新鮮でしょう?」
M「そうですね。物理とは全然違うなって思いました。周りの物理選択の子も結構大変そうです。」
T「物理は入試では高得点を取りやすいんだけど、医学部に入ってからはどんどん生物や医学の学びにシフトしていくから、物理という科目自体からは離れていくよね・・・。だから、医学部受験で物理を選択するときは、物理の法則や知識をただ入れるんじゃなくて、それを体系的に学ぶことによって、生物を勉強するときにも生きるようにアタマをよくしていく学び方をしていくのが大事だよね・・・。」
M「ですね。私、大学でも成績いいんですよ(笑)」
T「それはよかった(笑)」

 MさんがGHSに訪問してくれた時には私と天野先生が在室。村田先生は休暇中でしたので、Mさんは村田先生に置き手紙を残してくれました(まじめですね・・・)。許可をもらいましたので掲載します。

村田先生

ご無沙汰しております。○○です。おかげさまで楽しく大学生活をおくっております。1年生の一般教養科目では、化学、物理をはじめ、GHSでの学びが役に立っています。先日の大学の化学の試験も●●と体系化学を引っ張り出してきて教えあいながら乗り越えました。本当にお世話になりました。久しぶりにGHSに来ましたが、去年よりも賑やかでびっくりしました。××と△△にも会えて、元気そうにしていたので良かったです。また、村田先生がいらっしゃるときに伺います。

 Mさんに限らず、この夏も多くの卒業生が顔を出してくれました。川崎医科大のM君、藤田医科大のH君、東北医科薬科大のKさん、金沢医科大のM君、信州大・医学部のTさん・・・元気な顔を見せてくれてありがとう!

posted by SatoTea at 09:38| 日記

2023年04月18日

[7] 藻が出た!!

共通テスト・生物の難化の影で
 今年は数学の難しさが緩和したため、明らかに生物の難化が目立ちましたが、昨年の数学ほどには、マスコミ等の槍玉には上がらなかったようです。

 それもそのはず、生物の選択者は、全体の1/2 の人数の理系選択者の中で、かつ、理科の化学・物理・生物の選択に分かれ(地学は少なすぎるので除きます)るので、その中で最も少ない6万人弱の選択者です。これは18万人超の化学の1/3にすぎません。
 これに対して、文系理系関係なく受験する数学は30数万人ですから、「被害者」の数は比べ物になりません。本来は、被害者の数によらず、議論すべき事態なのですが、生物受験者の無念と怨嗟の声には、マスコミは食いつかないようです。

そんな表沙汰にならない騒動の陰で、さらにひっそりと咲いた?「藻」の話をしましょう。

−ここで通りかかる人影あり−

天野A「おっ、共通テスト生物について書くんだね。GHS長野校でも生物をやろうと思っててね。昨年に輪をかけて難化したというから、今年の問題は、はじめて真面目に解いてみたんだ。」

田川T「そのことで、マスコミがあまり騒がなかった件を書いたところです。問題としてどうでしたか?


A「私は、受験は物理・化学選択だけど、医学部ではさすがに生物学がメインだった。学問としてはまだ雑多な感じで、あまり好きにはなれなかったけど、それでも、動物の代謝関係、免疫系、遺伝子関係の知識はそれなりに最先端で学んだし。

 あー、医学部の基礎では、ショウジョウバエの研究室にも行きましたね。あと、ウィルスとか病原菌とかの微生物ね。だけど、植物関係(薬草除く)とか、その間の系統の生物の問題については、基本的知識もないから、問題の意味がわからない。」

T「私も、物理化学選択でしたが、大学の研究室は植物系を選択しました。そこで植物の方から生物学を学んできました。」

A「そうだね。過去の職員会議(という名のアフター授業の飲み会)では、自宅の菜園で作っているアスパラとかシソについて質問して、その生命力の強さの理由を教えてもらったね。」

T「どういたしまして」


A「後でまた、植物の質問をしたいんだが、医学関連の自分の守備範囲の問題は、理解可能だった。あまり細かい知識がなくても、データの読み取りができれば、分析と結論が出せるようにできているから、とてもいい問題づくりだと思ったけどね。データをその場で読めばいいんだから、知識は最低限。むしろラクだと思ったが・・・・。

 ・・・昔のセンター試験の生物というのはね、直前一ヶ月くらい生物用語を覚えて過去問やると文系でも楽勝という問題だったからずっと興味なかったし見る気もしなかった。文系受験生のほとんどが選択して、安直な勉強でも点数を取れるための問題づくりという印象。・・・だからというのがすべての理由ではないによせ、ワタシャは文系ながら物理・化学選択でしたね〜。


 ところが2016年以降、理科は、文系と理系に分かれての選択となって、ガラッと変わった。初見のデータを示しての分析と解釈という科学研究の正統派的問題。だから、以前のような勉強していると歯がたたないでしょ。それが「難化」の中身でしょ? 全然いいことですよ。あるべき姿ですよ。」


T
「そうですね。物理は難しそうだから、生物で・・・という逃げ場というか、どちらが有利・不利とかの姑息な理由ではなく、むしろ、自分の興味・関心で理科を選択すべき形になったのですから。

 以前のセンター試験の問題はよく知りませんが、今年の6問とも、各分野の専門研究者が、気合を入れて作っている印象です。科学的思考力を、仮説→実験データ分析→検証というプロセスにあるという視点に立つと、どれもそういう問題。用語を覚えてなんとかなる問題は1割もありません。」

A「そう、さらに記述問題にすれば、東大とかに出してもいい素材ではないかと思いましたね。・・・んーだから、ふつうは「難しい」となるのかな。直接は知らないけど、基本的知識だけあれば、あとはデータを見れば答えが出せる、というのは入試問題としては理想ですよ。物理には、そんな素材はもうないでしょ。ネタ切れでしょ。すべて法則的に解明されているから。作る方は困っていると思いますよ。化学は、生物ほどではないにせよ、そういうネタはまだまだあるわけですよ。その差が如実に現れている。」



藻が出た!!

2023生物 藻.jpg



A
「じゃあ、植物についての質問。第1問のシアノ・バクテリアの光合成遺伝子の問題の最後に付け足しのように、藻の設問があります。ワタシャ、これはさすがに分からないというか、藻なんて知らない。藻なんて(というと藻さんに失礼だけど)薬にも毒にもならないんじゃないかな。だから、生物の中でどういう位置付けとか、なんでこんなものを研究しているのとかを知りたいわけですよ。」

T「私も、藻についてはそれほど専門的な研究をしたわけではないのですが、植物研究の世界での教養レベルの話でしたらできると思います。そもそも藻というのは、すべての植物の祖ですから、やはり植物関係の研究者であれば藻については多かれ少なかれ目を向けているものです。」


A「とりあえず、素朴なところから。昆布やワカメとか海苔とかアオサとかモズクとか海藻と、ここの四つの藻は同じ仲間どちらが先淡水と海水とで藻はどう違うの?  

T「問題の表1に載っている紅藻(こうそう)・褐藻(かっそう)・ケイ藻(ここの“ケイ”は漢字で“珪”と書きます)・緑藻(りょくそう) というのは、大きな分類群のことで、

褐藻類にコンブ・ワカメ・モズク

緑藻類にアオサ

紅藻類にテングサ・アマノリ(海苔の材料)

などがいます。珪藻類には世間に知られている種類のものはありませんね・・・。珪藻類はすべて単細胞なので。

 ちなみに、図2にある “シャジクモ類”は陸上植物の祖先と言われいて、シャジクモ類が陸に上がってコケになっていった、と言われています。

 我々が日頃目にする植物というのは、光合成生物全体の系統樹から見ると、大樹のうちのほんの小枝にすぎません。植物が陸上で進化している間に、藻類の方も海水や淡水のなかでずーっと進化し続けていて、枝を伸ばし続けています。

A「ほう、ちょっと面白い感じがしてきましたね。では、生物学的には、藻はどういう視点から研究対象となっているのよーするに、藻のどこがそんなにエラいというか研究のフォーカスというか?その辺はどうでしょう?

        ・・・・次回につづく

posted by SatoTea at 12:40| 生物

2023年01月28日

[6] 2023 共通テスト 物理

昨年に続いて、共通テスト3年目の物理についてコメントしておきたいと思います。
今回は、GHS本部・新宿校の物理担当講師、田川先生とのコラボ企画です。

今年の共通テストの平均点とGHSの結果
田川(T): 今年の共通テストの物理の平均点は、2022年の60.7点から、2.7点上がって63.4点(共通テスト中間発表時のデータ)となる見込みです。
ちなみに、GHSの物理選択者の平均点は83.3点です。去年70点台であったのが90点台になっている例が何人かいて一年で確実に伸びたことがわかります。最高点は95点です。

天野(A): 長野校では100点が出ました・・・と言っても今年は生物選択者に偏っていて物理は二人っきりなんですよ。もう一人は90点。でも化学はちと苦戦し、二人とも物理に比して-20点ほどで悔しがっていましたね。 
 本ブログ[39]でも書きましたが、物理は昨年と問題の作りが似ていて、かつ、より易しくなっているので、生物や化学と平均点で大差がついて、「得点調整」という‘敗北宣言’が出されましたね。「科目間の差異がなぜ生じるか」ということについては別稿に譲るとして、[39]では、問題についての具体的コメントまではしていないので、本部校と長野校との共通認識として、ここでしっかり掘り下げておきましょう。



各問題について
第1問
T: これは例年通り小問集合です。この後の第2問、第3問、第4問に入りきらなかった分野、力学のエネルギー・運動量保存則、熱力学、電磁気学の磁気分野、原子物理をまとめて入れた形になっています。
 後で述べますが、これらの分野はホントはもっとスポットライトを当てて扱われなくてはいけないはずですが、後の方で、設問数を稼いでいる「こだわり問題」に押しのけられて、ここに集合させられています。問題の難易度は「かなり易」であり、教科書レベルの知識の単純な適用で答えられるものばかりです。

A:易しいにもほどがあるというか、問1のバランスの問題なんて、小学生の高学年なら正解できますよ。物理で出していいクオリティーではない。少なくとも、板をもっと長くして、人が位置を変えるくらいの変化がほしいところです。問2,3,4と同じく計算は一切不要で答えが見えます。
 かつてのセンター試験の易問を「ゆとりの時代のヘタレ問題」ということがあるのですが、今年はそれ以下ですね。問5は唯一の「原子物理」ですが、光電効果でのエネルギー保存則の式が書ければよいだけですので、ちょっと手をつけていればできますね。こんなことしていると、また以前のように「原子物理」が現場で軽視されますよ。センター試験の晩期は原子物理もしっかり出るぞ!! という現場への警鐘のような問題を作っていて、高校の現場もここまでとにかく終わらせようとしていたのに・・・。(内緒話: 我々の時代は、授業時間が足りなくなって、プリント配布でごまかしたり、やったことにして・・・というのが普通でしたが・・・。)


第2問
T:「こだわり問題」のその1です。空気抵抗を受けるアルミカップの落下についての問題です。空気抵抗を受けて落下する物体の運動を、どのような式で表すのが適切かを、共通テストでは教科を問わず定番となっている会話形式で検討していきます。
まずはアルミカップについての運動方程式を
    ma= -kv + m g
         (m:質量 a:加速度 g:重力加速度 v:速度 k:定数
と仮定し、実験データを取り、グラフ化してあります。しかし、この「公式」のままではアルミカップの運動をぴったりと表せないので、「新しく速度の二乗に比例する抵抗力」を仮定し、グラフを書いて推論していく・・・という流れです。

A: アルミカップが<質点>ではなく、シンプルではない形を持った物体であり、かつ空気による抵抗力なので、本来は、流体力学が絡む運動です。
 だから、球体モデルで得られた「暗記している公式が破れてしまう!」という事態となるわけです。「抵抗力が速度に比例する」というのは、そこそこ勉強すると、問題集では一度は出会う公式レベルです。これが不成立の場合を考察するという流れは「公式暗記だけではだめ、データから推論するという思考力が必要」という方針に応えての「こだわり問題」ですね。

T:その通り、「仮説を立てて、実験して、検証されなかった点について、また新しい仮説を立てる」・・・というのは、一昨年、昨年の共通テストでも見られた流れです。第1回,2回,3回とこの<仮説→→検証>という科学的手続きを問う問題が出題されていますので、物理の共通テスト作成者は、この科学の実証的流れをミニマム形態で二辿ることを「思考力を問う」問題作りの指針にしているのは確かですし、自然科学では当然にそうなります。

A: それは理科科目全部に共通する方針ですが、化学・生物(地学は同方針だが除外)では、個別科学としてのあり方に応じて異なった様相を呈しています。これについては別稿で考察することにしましょう。

T: そうしましょう。問題2に戻りますが、最後2つの問いについてはその流れをいったん終えてから、先生が「この見方でも同じように考えられるよね」と矛先を変え、別のグラフを出してきて、でも結局、同じ結論に持って行こうとしています。この試みは、物理の共通テストでは新企画です。最初に提示された「仮説と検証」の流れとは違う切り口のため、全体のテーマがもやっとします。違うところに行くのかと思ったら入り口を変えただけで出口は同じということですから。

A: 要するに、付け足し感・欲張り感・こだわり過ぎ感がありなんです。一本の線を引き終わった後に、小さい枝のような線を付け足す感じです。こんなのでページ数を食っているくらいなら、もっと他の分野を太く・広く問うことにした方がよいのではと思います。

T: この点を除けば、第2問は単体で見れば、力学的視点からはよい問題だと思います。


第3問
T: ドップラー効果についての問題です。音源が円運動しており、観測者に届く音の波長が変化していきます。観測者にとって最大の速さに見える地点がわかれば、音源の運動によって波長がどう変化するかをイメージするだけで、ほぼすべての問題が解けてしまいます。残りの問題も、教科書の公式レベルを出ません。

A:「斜め方向のドップラー効果」はどの問題集にもある定番です。よくある物理現象の見慣れたテーマについて、易しい問いであちこちを膨らませて「尺を稼いで」います。つまり、「引っ張り過ぎ」ですよ。変化球もサプライズも何もなく最後まで淡々と解けてしまいます。

T:公的な一次試験である共通テストとしては、教科書の全履修範囲を踏まえて「できるだけ偏りなく色々な分野を問うのが望ましい」わけであり、このような作りは良いとは言えないでしょう。

A:そもそも、こんな、どの問題集にも載っているような「斜め方向からのドップラー効果」という物理現象で、大問を張るのは荷が重いですよ。前半と後半で波動の別問題にするとか・・・。

T: 単体なら、むしろ設問は2つくらいにとどめて、第1問の小問集合に入っているのがふさわしいのではないでしょうか。


第4問
T:「こだわり問題」その2です。はじめは、コンデンサの知識の確認レベルの易問をふまえ、コンデンサの充電過程を、コンデンサの電流−時間のグラフから読み取って電気容量を求めよう・・・という問題です。
 物理をしっかり学んだなら知っている人も多いと思いますが、コンデンサの充電過程について電位の関係を立式すると、第2問の抵抗力を受ける運動の運動方程式と同じ形の式になります。一般的な形で示すと、

x’ (xの時間微分)=−K x +L            [K・Lは定数]

という形の式になります。つまり、共通テストの問題作成チームは、同じ形の運動方程式を大問丸々2問分、力学分野と電気力学分野で出題していることになります。こちらが心配することではありませんが、入試物理で目にする物理現象で、この形の式になるものは、あとは電磁誘導くらいしかありません。つまり、この路線は、あと一年でネタ切れになってしまいますよ。今後はどうするのでしょうか・・・。

A: この数学的背景には微分方程式があり、これを数学的に解くと指数関数になるのですが、提示されているのはそのグラフです。大した微分方程式ではないし、昔々、私が文系であった頃にやった程度のことなので(ゆとりの時代に排除されましたが・・・)、体系物理アドバンスの授業では数学的に普通に教えています。どちらの問題もお馴染みのグラフです。・・・体系物理テキストでは、力学とか電気とか区別せずに、過渡的現象として横断的に並べて教えていますよ。

T: この問題の最後でもまた、第2問と同様「この見方でも、同じことが考えられるよね」的設問が続いています。また設問数稼ぎです。繰り返しになりますが、目先を変えるなら、いっそ別の物理現象・別の単元に飛んで新たに問う方が、しっかり勉強した受験生に応えることになると思うのですが。

  それはそうとして、この問題で一番まずいのは、実はそこではなく、
      「会話の誘導なんか読まないで、自分で式を立てて考える方が素早く答えられる」
ということなんです。「むしろ会話文をまじめに読もうとすると、余計なことを考えて遠回りしたり、混乱したりする元になってしまう」ということにもなります。
「ネタ」(=どの物理法則・物理公式を使うか)が見え見えで、分かり切っているものを、「さあ一緒に考えていこう」とわざとらしく誘導していくと、くどくどと文章ばかり長くなり、できる受験生には無用の長物、一方、まだ先が見えない受験生にとってはかえってわかりにくくなってしまうのです。

A: まあ要するに、元も子もない言い方ですが、「有害無益」、「帯に短し・・・の類」です。そもそも電気回路の現象で、初見のものなんて皆無でしょう。もちろん、現実的には無いわけではないですが、そういう現象は高校物理では数学的に手に負えなくなるから出せるものではない。それでもやろうとすると難関大の二次試験で「必要な知識を与えて解かせるタイプ」の難問題の系統になります。
 そもそも、電気回路の現象については、すべて物理法則・公式で解けるようにできているのだから、結論は見え見えになります。ネタバレしているのに、それを隠して誘導していくのは、「二度目はさすがに笑えない漫才のネタ」のようで、飽き飽きするというか、付き合うのが面倒臭いというか。だから、YouTube観るみたいに、倍速&スキップで丁度いい。


<イメージ重視>=<数式軽視>の増強
T: 各問題について触れましたが、全体としては、「イメージすれば解ける、式は公式レベルで解ける問題作り、難しい数学的計算・式操作はさせない」というのは、昨年度の出題にもみられたもので、<イメージ重視>=<数式軽視>を引き継いで、むしろそれを強化しつつ、かつ、<仮説→検証>という思考力を問うという方針もまた強化した、という印象です。
<イメージ重視>=<数式軽視>の傾向についてのコメントは昨年度と同じく、
「物理にとって数学的部分、数式計算・式操作は物理として重要な側面であり、まじめに物理を勉強してきた=しっかりと数式を立てて解いていく練習を積んできた受験生が力を発揮する場がなくてかわいそうだ・・・」。

「掘り下げ」という名の「引っ張りすぎ」
T:さらに、今年はそれに輪をかけてかわいそうなのが、<仮説→検証>のスタイルを強化したため、1つの問題を同じ物理現象で引っ張って設問数を稼いでいるため、結果として出題分野・単元の偏りが大きくなってしまったことです。
 例えば第2問では、抵抗力による落下だけをずーっと扱っていたために、力学のほかの大事な法則であるエネルギー保存則や運動量保存則が小問(第1問 問3)へと押し出されてしまいました。

A: 力学のヤマの1つである、単振動的なものは影も形もないという有様ですね。慣性力も無いですね。こんなひどい偏りは、センター試験時代でも無かったと思いますよ。大河ドラマの主役級なのに、すぐに殺されて退場となるチョイ悪役をあてがわれたようです。

T: 第4問では、コンデンサにずーっと寄りかかっていため、電磁誘導の居場所がなくなり、とりあえず「まんべんなく出題しましたよ」という言い訳づくり的に、やはり最初の小問(第1問 問4)にちょこっとだけです。
熱力学に力を入れて勉強した人は、今年の共通テストでは涙を禁じえなかったことでしょう。なにせ小問が1問だけですから・・・。

A:涙を通り越して、憤怒じゃない?「おい、そりゃなかろうがっ!!」(山口県人)と。
 こんなんじゃ、せっかく体系物理で鍛えし技も使いようがなく、上位層では全く差がつかない。交流回路もないし、波の干渉も屈折もないし・・・。無い無い尽くし・・・。そう、今年の物理の総括は「無い・無い」でどうですかw

T: たしかに、共通テストの制限時間で出題できる問題数には限りがありますから、一つの物理現象について掘り下げようとして設問数を割くほどに、全体として出題分野・単元のバランスが悪くなっていかざるを得ません。「思考力を試す」ために「偏りのない知識力」が犠牲になっている構図です。
上でも述べたように、第2問・第3問はもっと削れるところがありますし、第3問については、小問で問えば十分なはずなので、もし、私が共通テストの出題を任されたとしたら、さすがにこれらの点を修正して出題分野・単元のバランスをもっと良くすることでしょう。

A:「もし私が将来文科省大臣になったあかつきには・・・」というパターンは私の授業ネタの1つですが、君はやはり元GHS生ですなww


そもそもの話なのですが
T: この「掘り下げるような問題作り」について、物理という科目で真新しく見える現象や切り口を探してきて、それを科学実証的な思考力を問う問題に仕上げるには、東大や京大といったレベルの難度の問題でこそ可能なのであり、またそうして作られた問題は、それらの大学を受験するレベルの受験生が取り組むことで意義のある問題です。
それを全国の受験生が受験する、平均的学力を問う一次試験である共通テストに持ってこようとすると、難度の高い問題は作れない関係で、掘り下げようとしていくうちに議論が強制的にストップしたり、定性的な判断で逃げざるを得なかったり、あるいは第2問・第4問のように一定レベル以上の受験生には、すでに「ネタバレ」している題材をくどくどこねくり回したり、ということをせざるを得なくなってしまうのです。

A: あるいは、行き詰まりをごまかすかのように、付け足し的な設問で目先を変えて設問を稼いでみたりね。
 喩えるならば、コンビニの食材で高級フレンチを作ろうとするようなもの、あるいは、50ccのバイクでオフロードを激走しようとするようなもの、または、普段着で2000m級の登山をしようとするようなもの(雪の八甲田山か)・・・作成担当者には大変失礼ながら、でも事実ですので。そもそも出来ないものを崇高な理念の下に強行させれらているのです。

T: 「狭い範囲で、科学的実証的思考力を試す問題を作れ」という無理難題を前にして、一生懸命に問題作成している方々には酷評に聞こえるでしょうが、しかし!! 入試物理を本当に掘り下げて・どんな難関にも立ち向かえるようにと、日々真剣に教えている身としては、まったく正直な気持ちです。


ささやかな改革案
T: 最後になりますが、日本全国の受験生が受ける物理の試験としては、センター試験のままでもよかったのです。今のままでは物理を選択した受験生がかわいそうです。それでも<仮説→検証>という科学的正統派の問題を入れなくてはならないというのであれば、せめて4問のうちのどこか1問はそういう問題にするが、他の問題は、センター試験にならって、範囲に偏りなく設問を作り、というのではいかがでしょうか。

A:そう、1つでいい。そんなにネタはないのだから。
 あとは、立式した後に数式の操作・計算をして答えを出すというプロセスも、物理的処理能力と認めて、それなりに問うということも復活させてほしいですね。
                              <了>

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posted by SatoTea at 13:37| 体系物理

2022年10月20日

[5] 物理を学べば・・・

週間テスト
GHSでは、一週間に一度週間テストを実施しています。

物理は例年前期だけ週間テストを実施しているのですが、今年はその週間テストを、生徒の実力の関係(物理が苦手な生徒が多い年でした)で後期に繰り越して実施しています。

今年の生徒たちは、前期からじっくりと実力をつけ、半年の熟成期間を経てのテスト、ということで、結果としては例年(前期実施の年)よりもテストの出来が良く、より充実した内容の答案を提出しています。

週間テストの内容は、前期で学んだ分野ですので、生徒たちはテストを受けることで前期の内容を復習、いや、もう一周することになります。これは物理の学びにとってとても素晴らしいことです。

例えば力学などは、4月に初めて出会ったときと、物理を一通り学んだあとで再会した時にはまるで別物のように見えてくるものです。

物理体系との出会いは格別
初めに力学を学ぶときは力学で学ぶことがどのように他の分野につながっていくかがわからないで学ばざるを得ませんが、前期の授業で、物理の全ての分野についての学びを経ることで、力学の、例えば運動方程式、例えば仕事とエネルギーの関係を再び眺めたときに、熱力学、電磁気学、波動の様々な知識が繋がって一つになっていること、さらには物理全体が一つの体系であることを実感できるでしょう。

「今まで物理をやってきてよかったなあ」

「物理ってこんなにもシンプルなものだったのか」

という感動はに格別のものがあります。

これは今のところGHSで物理を学んだ人だけの特権であり、ここで共有できないのが残念ですが、単なるるわかりやすい説明を聞くとか、詳細な知識を知るだとかとは次元の違う感動というものが確かにあるのです。

もちろん、その感動がいつやってくるか・・・は人により違いがあります。後期でわかる人、受験直前になっていきなりわかる人・・・かくいう私も、物理が本当にわかったと思えたのは、GHSから大学に入って、物理を自分で勉強しているときでした。

だからこそ、せっかくGHSに入ってきてくれたのですから、先輩として生徒達にはその感動を受験中に実感できるようにしてあげたいと思います。

GHSで物理にしっかりと向き合って学んでいけば、物理の実力は必ず付きますし、その先に努力が報われる―合格はもちろんですが、それに加えて学びの楽しさも―ときが必ずやってきます。

週間テストもすでに7回実施しましたが、答案からは一人一人の前期からの着実な成長の証が見て取れます。できれば生徒全員と、物理がわかる感動を共有していきたいと思うのです。
posted by SatoTea at 09:33| 体系物理

2022年05月01日

[4] 三者面談

高校生との三者面談
 高校生コースでは、3年生になるあたりで三者面談を行います。本格的な受験勉強が始まる前に、予備校とご家庭で受験への認識を共有するためです。
 今年の三者面談もほぼ終わりましたが、毎回の面談でしみじみ感じたのは、生徒の保護者さんたちが、GHSが伝えようとしていることの大切さを共有してくださっていることのありがたさです。

 おそらく生徒は、GHSの授業を面白く聞いてくれたり、家でGHSの話をしているのでしょう。実際、親御さんから「GHSに来てから塾に行くことが楽しくなっている」「他の塾では医学部に入ることをあきらめろと言われたが、GHSに来てから実力がついていく展望が見えたようで・・・」等々のお言葉をいただきました。GHSを好意的に見てくださっているため、三者面談はとてもスムーズに進みました。

去年の夏から今まで・・・
 私が今の三年生を担当したのは、二年生の夏ごろからでした。二年生の段階では、三年生の本格的な受験勉強の準備を中心に行います。準備、というのは、何よりもまずは、「予備校に行くことが楽しい」と思うことです。それから、「勉強することも悪くないぞ」と思えるようになれば最高です。というのも、(残念なことですが)基本的に高校生で勉強が好きで、勉強の面白さを求めている人は少数派です。「学校が課題を出すから」「大学に合格するためにやらなくてはならないから」というのが圧倒的に多数派になってしまっています。もちろん、勉強というか、何かを学ぶことや、分かること、というのは本当はとても楽しいことです(それをGHSでは伝えています)。ただ「やらなくてはならない」という強制がそれらを楽しくないかのように見せています。

 理想は、生徒が「自分はこれを学びたい」と自然に選ぶこと、させられる勉強ではなく、何をやってもよい自由の中で選ばれる勉強になることです。そうなりさえすれば成績など(苦しい試練を歯を食いしばりながら乗り越えずとも)勝手に上がっていきますし、そうして自分で選び取って勉強を進めていくことこそが、生徒にとって一番面白く、また、生徒の未来(大学に入っても勉強は続きますし・・・)の役に立っていくことにもなるのです。

 しかし、一人一人タイプも目的も違う高校生たちに、どのようなアプローチをすれば「勉強もそれほど悪くないぞ」と感じてもらい、自分に合った勉強法を見つけられるよう指導していくのは、やはりそれなり(1-2カ月ほど)の時間がかかりましたが、今年の三年生たちは皆勉強に対する意識が向上しており、それを今回の三者面談では実感し、保護者さんたちと共有できる時間を持つことができました。

 近々今年筑波大学の医学部へ現役合格した生徒の合格体験記がホームページ上にアップロードされます。その生徒のように、今年の三年生たちも、ぐんぐんと飛躍的な伸びを見せてくれるに違いありません。
posted by SatoTea at 14:17| 日記

2022年02月11日

[3] 高地トレーニング

共通テスト後
共通テストが終わり、生徒がそれぞれの受験校を決定してから数日、GHSは直前講習期間に突入しています。
直前講習期間とは、共通テストが終わってから受験本番まで、生徒の受験校に合わせて、個人指導を行っていく期間のことです。
この個人指導で、志望校の問題傾向、受験日までの自学自習の方針などを伝えます。

受験までの自学自習というのは、あともう少しで合格ライン、という人にとっては文字通り合格を左右する最も大事な期間であり、普段は「物理は実力があれば大丈夫」と言っている私も(合格に必要なことはすべて教えたとはいえ)できる限りのことをしてやりたいと思うのが人情というものです。

過去問を解くのが直前の対策か?
ところで、GHS物理の直前講習は、(よくある)生徒の志望校の過去問を解く・・・という安直な方法はとりません。
 なぜこの方法がまずいのか・・・ある受験生のたとえ話をしましょう。
その受験生は、物理が苦手科目で、共通テストも平均点よりちょい上くらいの点。なので二次試験も物理問題の難易度が標準くらいの大学を選択します。
「物理は苦手だけど、平均点を取れば大丈夫・他の科目でリードしよう」と考えて、その大学のレベルに合った物理の標準問題を解きまくって本番に臨みます。
 しかし、不幸なことにその年に物理の問題の難易度が上がっていて、試験の緊張と合わさって頭がパニック状態、当然結果は不合格・・・。

・・・こんなことが起こりうるのが’本番’です。今年の受験生は共通テストのショックで免疫がついているとはいえ、それでもそうしたリスクは常に付きまといますし、もし想定通りの難易度だとしても、本番で練習の力がしっかり出せるとは限らないものです。

 ではどうするか?それが「高地トレーニング」です。
 生徒の志望校と、傾向が同じ・あるいは似ている問題で、かつ一段難易度の高い大学の過去問を演習するのです。

例えば志望校が筑波大学だったら○○大学、または○○大学。
例えば志望校が信州大学だったら○○大学。
・・・
 具体的な大学を指示するときは、大学の傾向・難易度に加えて、一年間付き合ってきた生徒の’キャラクター(どういう分野が得意・不得意、計算ミスをするのはどういうときに多いか・・・)’も考慮して選んでいきます。
 この方法は東大・京大のような正真正銘の最難関の大学には使えませんが(それらの大学ではまた違う方法がありますが、しかし今回のテーマから外れるので今は置いておくこととします)、さておき、この「高地トレーニング」では、受験本番の数日前まで、一段難易度の高い(高地)大学で(時間配分なども指示します)存分に演習し、それから志望校の過去問へ’降りてきて’数回の演習をした後に本番に臨むのです。

過去問に降りてくると
 こうした訓練をした生徒は、本番数日前に志望校の過去問へ降りてきた時に、「あれ、この大学の過去問はこんなに簡単だったっけ?」と思うはずです。息も吸いやすいし、パフォーマンスも訓練以前より出せる。
 この方法は、前述のように、本番の試験が難化した場合に備えられることのほかに、難化せず、難易度が例年並みである場合にも効果を発揮します。過去問を解いていた時の余裕・安心感が、本番での計算ミス減少、落ち着いて問題の全体像を把握しながら問題を解いていくことにつながります。
 全体像をつかみながら問題を解いていくこと、また計算ミスをしないことがどれほど大事かは、物理選択者なら皆わかっていることと思います。去年の4月から着実に物理の実力をつけてきたGHS生たちは、その実力が素直に出せれば志望校へ合格するラインに到達しています。
 後はそれを発揮するだけです。皆さんもしっかりと気持ちを整えて本番に臨んでほしいと思います。
posted by SatoTea at 09:16| 体系物理